講演会について

高野山大学では、株式会社フジキン会長 小川洋史氏より、故 小川修平氏のご遺志として遺贈された寄付金をもとに、「高野山大学フジキン小川修平記念講座講演会」を開催しております。
この講演会は、「宗教と科学の対話」をテーマに、宗教的な事象に科学の視点を織り交ぜながら、光を当てていきたいとスタートしました。
今日、科学の急速な発展に伴い、我々を取り巻く環境も、数十年前と比べて変化しています。同時に、現在社会をにぎわせている原子力発電の問題や生命倫理の問題、環境問題やストレス社会の現状など、人間の存在をゆるがせかねない様々な問題も浮き彫りとなってきています。一方で、宇宙とは何か、生命とは何か、環境とは、こころとは、といった根本的な問いについては、未だ不明瞭な点が多いことは否めません。
高野山大学では、宗祖弘法大師空海がもたらした真言密教の教えに基づく宗門大学として、このような現代社会の諸問題に対し、「21世紀高野山医療フォーラム」や「高野山大学いのちのセミナー」などの公開講座を設け、様々な意見や考えを社会に向けて発信してまいりました。
真言密教では、山川草木すべてのものが生きており、自己と本来的には同質のものであるという壮大な生命観・宇宙観を有しています。この密教を中心とした精神文化の研究において豊かな蓄積を持つ高野山大学が、現代的な諸問題の解決にわずかながらでも貢献できるとすれば、こうした伝統を土台にして、「宇宙」や「生命」といった根本的な問いを巡る、終わりなき対話に参加していくこと以外にないと考えます。
この「高野山大学フジキン小川修平記念講座講演会」を通して、現代社会の抱える問題に真言密教はどのように応えることができるのかという社会的期待に応えるとともに、この講演会を通して一人でも多くの方に、現代の諸問題を考える上での一つの道標を示すことを、私たち高野山大学は目指しております。

フジキンとは

株式会社フジキンは、1930年の創業以来、常に極限に挑戦し、技術の究極を超えることを企業ポリシーとしておられます。株式会社フジキンの創りだす特殊精密バルブ機器を代表とする、超精密ながれ(流体)制御システムは、陸・海・空・宇宙の多彩なフィールドで貢献する製品として、研究創造開発を絶え間なく行っています。「常に極限を超える。」株式会社フジキンはその言葉を胸に、世界フジキンを目指して日々チャレンジしておられます。
第15回フジキン小川修平
記念講座講演会
「第15回フジキン小川修平記念講座講演会」は、新型コロナウイルス感染拡大状況を鑑み中止となりました。
変わりまして、公演予定でした内容を収録したものを配信いたします。
講演動画
「存在とコトバの深秘学 -井筒俊彦の空海論―」
高木訷元 先生
大学に進みながらも、常に「還源」を思いつづけた空海は、「径路未だ知らず、岐(ちまた)に臨んで幾度も泣き」ながら、遂に「秘門」に出会う。しかし「文に臨んで心昏(くら)し」という、天下の秀才にして初めての苦い経験に大きなショックを受ける。ここに留学生として入唐し、まる二年に亘る留学生活における受法の成果は、帰国時に国家に提出した『請来目録』の中に、余すところなく記載され、それが真言秘法の核心たり得ている。今、その一端について、井筒俊彦博士の空海論を参照しながら、「存在とコトバの深秘学」「法海は一味なり」のマンダラ思想の核心と現代的意義について言及したい。

高木訷元 先生
1956年高野山大学文学部密教学科卒業。65年東北大学大学院博士課程(印度学仏教史学専攻)単位取得退学。67年高野山大学文学部助教授、73年同教授。その後、文学部長を経て、87年から6年に亘り学長を勤める。2001年高野山大学名誉教授。文学博士。島根県圓應寺住職。
専門はインド哲学史、平安初期仏教史。著書に『古典ヨーガ体系の研究』(法蔵館)、『空海 生涯とその周辺』(吉川弘文館)、『空海の座標 存在とコトバの深秘学』(慶應義塾大学出版会)、『空海 還源への歩み』(春秋社)など、多数あり。
「仏教における科学と哲学」
竹村牧男 先生
仏教の中に唯識思想がある。インドで5世紀頃大成され、玄奘三蔵が中国に持ち帰り、日本にも伝来して興福寺、薬師寺などで研究された。唯識思想は、世界は心が描き出しているにすぎないと説くが、その背景には、世界の精緻な科学的分析と、言語・認識・存在をめぐる哲学的究明とがある。しかもそれらが一体となって、人間にとってもっとも根本的な問題に関わる宗教的了解をもたらしている。本講では、唯識思想の概要とその華厳や密教への展開について解説しながら、そこにある科学と哲学の特質を探究するとともに、その現代的な意義について考察したい。

竹村牧男 先生
昭和46年6月 東京大学文学部卒業
昭和50年4月 東京大学大学院博士課程(印度哲学)中退同年5月
東京大学文学部助手に就任。
以後、文化庁文化部宗務課専門職員、三重大学人文学部助教授、
筑波大学助教授(哲学・思想学系)、同教授を経て、平成14年、
東洋大学文学部教授に就任。
後、平成21年9月に東洋大学学長となり、令和2年3月末日まで務めた。
平成14年 筑波大学名誉教授に就任。
著作に、『入門 哲学としての仏教』、『ブッディスト・エコロジー』、『空海の哲学』、その他、多数あり。
「星の最期と第二の人生」
川中宣太 先生
夜空に見える星は、そのほぼ全てが太陽と同じように自ら輝いている「恒星」と呼ばれるものである。実はこれらの恒星は永遠に輝きつづけることはできず、いつかその一生を終える。しかし、その最期を迎える瞬間やその後に残される天体は、生きている星には見られないような激しく活発な振る舞いを示すことが分かっている。 本講演では、星が第二の人生を送る中で見せる現象やそれらの観測手法について専門用語をなるべく使わずに紹介し、最新の研究で何が分かってきたかについてもお話したいと思う。

川中宣太 先生
2008年京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士課程修了。東京大学ビッグバン宇宙国際研究センター特任研究員、高エネルギー加速器研究機構博士研究員、ヘブライ大学ポスドク研究員、東京大学理学系研究科助教を経て2016年より現職。
専門は高エネルギー宇宙物理学の理論的研究。特にブラックホール降着円盤、高エネルギー宇宙線、銀河系内ブラックホール探査に興味を持っている。
過去の講演内容
第1回講演会(平成24年9月8日) | |
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講演 | 仏教と科学 松長有慶(前高野山真言宗管長) |
第2回講演会(平成24年11月30日) | |||||||
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講演1 | いのちと医学 ―大阪大学の歴史とともに― 平野俊夫(大阪大学総長) |
講演2 | いのち・いやし・いのり ―宗教と医療の根底にあるもの― 棚次正和(京都府立医科大学教授) |
講演3 | 地球の自然治癒力の回復を目指して 帯津良一(帯津三敬病院名誉院長) |
シンポジウム | パネリスト:棚次正和/帯津良一/鮎澤聡(筑波技術大学准教授) |
第4回講演会(平成25年10月13日) | |||||||
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講演1 | 科学と思想の相互越境への挑戦 松本紘(理化学研究所理事長(京都大学前総長)) |
講演2 | ダーウィンが来た…新しい因果性の科学 西川伸一(JT生命誌研究館顧問) |
講演3 | 心は遺伝子の働きを調整する 村上和雄(筑波大学名誉教授) |
シンポジウム | パネリスト:西川伸一/村上和雄/棚次正和/生井智紹(高野山大学名誉教授) |
第5回講演会(平成26年11月29日) | |||||
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講演1 | 日本人の信仰心 山折哲雄(宗教学者) |
講演2 | 景観から見た日本の心 涌井雅之(岐阜県立森林文化アカデミー学長) |
講演3 | 神・人・世界 そして科学技術 松長有慶(前高野山真言宗管長) |
第6回講演会(平成27年8月29日) | |||||
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講演1 | 半導体-原子の世界のものづくり- 西義雄(スタンフォード大学教授兼システム研究アライアンス会長) |
講演2 | 空海の想い-自然から意味の世界へ- 村上保壽(高野山大学名誉教授) |
講演3 | 見えるものと見えないもの 松長有慶(前高野山真言宗管長) |
第7回講演会(平成28年2月20日) | |||
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講演1 | 小さな気泡の不思議な世界 ~マイクロバブルとナノバブルの基礎とその応用~ 高橋正好(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 環境管理研究部門 研究主幹) |
講演2 | 水のいのち~真言密教の生命観~ 松長有慶(前高野山真言宗管長) |
第8回講演会(平成28年10月1日) | |||||
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講演1 | イノベーション-日米環境の違い- 中村修二(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授) |
講演2 | 「祈り」は遺伝子をうごかすか? 鮎澤聡(筑波技術大学保健科学部准教授) |
講演3 | 密教観法と祈り 松長有慶(前高野山真言宗管長) |
第9回講演会(平成28年11月5日) | |||
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講演1 | 大空への夢 -ドローンから国産旅客機MRJまで- 鈴木真二(東京大学大学院教授) |
講演2 | 空海の宇宙論パラダイムと現代科学技術文明 -乾坤は経籍の箱なり- 高木訷元(高野山大学名誉教授) |
第10回講演会(平成29年7月22日) | |||||
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講演1 | 人工知能と書 長尾真(京都大学名誉教授・元総長) |
講演2 | 手書き文字認識の過去・現状・未来 中川正樹(東京農工大学大学院工学研究院卓越教授) |
講演3 | 弘法大師の書 木本南邨(高野山大学名誉教授) |
第11回講演会(平成29年10月28日) | |||
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講演1 | 『見る』しくみから探る脳と心 藤田一郎(大阪大学基礎工学部教授) |
講演2 | 仏教-こころの科学 佐々木閑(花園大学文学部教授) |
第12回講演会(平成30年10月15日) | |||
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講演1 | 豊かな社会とは? 中鉢良治(国立研究開発法人産業技術総合研究所理事長) |
講演2 | 現代科学技術の宗教的な『いのち』観 島薗進(上智大学グリーフケア研究所長) |
第13回公演会(平成30年11月19日) | |||
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講演1 | 循環器医療のFueurability 澤芳樹(大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科 教授) |
講演2 | カリスマは『神の賜物』か? 井上順孝(國學院大學名誉教授) |
第14回講演会(令和元年11月16日) | |||
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講演1 | 太陽の脅威とスーパーフレア 柴田一成(京都大学大学院理学研究科 附属天文台 教授) |
講演2 | 私たちは類人猿とどこが違うのか 更科功(東京大学大学院講師) |
講演録
宗教と科学の対話 -宇宙の摂理への想い― その一~三 | |||
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発行 | 企業開発センター | 発売 | 星雲社 |